東京/川崎都市狼 Toshiro Kawasaki
池袋まで電車で30分の處に住んでゐる
だが東京は嫌ひだ
僕の詩には
Streetはない
あるのはTownだけだ
〈大東京惑ひの末や夜鷹蕎麦 涙次〉
何故なら若い頃から
東京、と云ふと
繁華な場所にしか行かなかつたからだと思ふ
その繁華さは
今の僕には差し障りあるのだ
僕のモッズの先達たちに
それは打ち明けられない
彼らはロンドンのCityと同じく
東京の街を愛してゐる
〈愛ゆゑに崩してしまふ積み木ならハナから積むな等とは云へぬ 平手みき〉
僕もこの歌の如く
かつて十代、二十代の
東京を望郷の
よすがとしてゐる
のだらう 嗚呼
言外の歌、底流よ!
そんな東京は
いつまでも近くて遠い
僕にとつての
冬の星なのだ、と云つたら
けざやに
あでやかに過ぎるであらうか?
#詩
日本web詩人会、初出
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