人格と世界観8・自由の理念と思考?/ひだかたけし
 
としても、思想世界を直観することは拒否しなかったであろう。
 人間自身は直観の成立に直接関与していないが、直観の理念は人間の中で生きて働いている。
そして、そういう理念が人間のなかで働けるには、その理念を現象させることのできる生産力がそこに存在していなければならない。
理念は事物の中で働いている。しかし、理念そのものを現象させるには、人間の活動がなければならない。
だから、理念固有の本性を人間が認識できるのは、自分の活動を直観するときだけである。
どんな直観がほかにあろうとも、人間が作用する理念の本質にまで迫っていけるのは、理念を直観するときだけなのである。
理念の作用を受ける事物は、人間精神の外で知覚内容として存在している。
理念を直観するとき、すべての人間の内部に、作用する側と作用を受ける側が共に含まれていることが分かる。
人間はその作用の全過程を残りなく自分の内部に生きいきと現している。



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