都市狼牙を?く/川崎都市狼 Toshiro Kawasaki
 
私は捨て台詞なら幾らでも吐ける
だが今後に取つておく事にしやう
死にかけたら詩があつた
身を賭すべきものがあつた
さう云ふ話だ

男子一生の仕事
には、ランボオはしなかつたが(そしてそれは失敗だつた)
私はもう若くない

せいぜいが牙を剥く、嗚呼これが
殘された道
牙剥いても
誰を嚇すつて譯ぢやなく

詩に身を浸すエクスキューズに過ぎない
生産的な場では(私は思ひ知らされたのだが)

私は全然、無力なのだ

何処に行つても小莫迦にされる
私つてものが嫌で
厭世的になつてゐた頃
私を救つてくれたのは
詩、だつた
ありがちな告白だが
何もこの齡で、ヒーロー志望もない

喧嘩は賣らないし買はない
私はもう
何も賣買しないのだ

女にもバイバイしない
物惜しみと云はれゝば
はいその通りです としれつと
してゐやう

私はランボオの轍は踏まない
年輪を信ずる
私は痴呆老人のやうに
冥界へと彷徨ひ行く

それをすら年輪と呼びたい

全く、それをすら。

#詩

日本web詩人会、初出
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