守り/よるもと
 
印を安心して押せる、
いまどきの人となり、
颯爽と駆け抜けては電車というものに乗って
懐かしい家へ帰る

その家ですら私の知ってる家ではない

何もかもない内で
今日も楽しかったと言えるのは
空がまだ青空と呼べる色をしているから
とばりが降りる
ミルクをこぼすように降りればもう
あなたはしあわせといえない
だれだって
寒さのうちに震え、電気を消した暗隅のへやで泣く
お菓子を食べながら
ただ虚しい時間をむさぼり食いちらかしている

(嘘よ。
くるくるした黒い糸をほどくのに精一杯で、
あたしにはとてもそんな暇がなかった。
糸が動くから捕まえどころがなくてそれを
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