齒母神つひに裸身となる/川崎都市狼 Toshiro Kawasaki
 
私が詩ウタふのは所詮平和の詩ウタだ
だが數知れぬ男根が齧り取られてゐる
それを平和の御世だと云ふなれば、の話

マッチング・アプリの戀
もはや女の實體を相手に
戀の手管を試す騎士道は
廢れてしまつたかのやうだ

源氏の時代に還つた、と人は云ふ
歌を聞かせて戀をものにするのだと
だがそれに先立つ万葉の世代に
男女が何をしたのか
忘れてしまつたのではないか

妻訪ドひ
齒母神つひに裸身となる
マスコミュニケーションが侵食してゐる
われらの生・政・性

ロバート・ブライの同題の詩は
ヴェトナム戦争の泥沼で
ぱつくり口を開けた齒母神が
挫折したアメリカの男根
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