THE GATES OF DELIRIUM。 ──万の川より一つの川へ、一つの川より万の川へと/田中宏輔
行けるところまで行き、残りの道は歩いて登りました。ふだんあまり汗をかくことをしないわたしのほてった身体を、澄んだ冷たい空気がたちまちさましてくれました。石段を登って境内に入りますと、よりいっそう澄んだ空気が肺に満ちていくような気がいたしました。さらに登って、院のご不動さんが祀られてある洞窟にまいりますと、小さなフンが、あちらこちらに点在しておりました。たぬきとか、いたちとかいったもののフンだったのでしょうか? じっさい、たぬきのフンも、いたちのフンも見たことはないのですが……。あとで、鴨川の源流の一つであります、「飛龍の滝」と呼ばれる、細長い直方体の樋の先から滴り落ちる水を目にしたのですが、まるで山の神がする小便のような印象を受けました。
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