THE GATES OF DELIRIUM。 ──万の川より一つの川へ、一つの川より万の川へと/田中宏輔
 
。世の中にある人と住家(すみか)と、またかくの如し。」という、よく知られる言葉で序を告げる『方丈記』を記した鴨 長明は、この河合神社の神官の家の出である。二つの川が合わさるところにあるから河合神社というのかどうかは知らない。たぶんそうなのだろう。二つの川が合わさって一つの川になるという、このことは、わたしに、「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ」という崇徳院の歌を思い出させるのだが、ただちにそれはまた、プラトンの『饗宴』にある、「かくて人間は、もとの姿を二つに断ち切られたので、みな自分の半身を求めて一体となった。」(鈴木照雄訳)という言葉を思い出させる。そういえば
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