LET THERE BE MORE LIGHT。 ──光の詩学/神学的自我論の試み/田中宏輔
の日から、筆者のなかで、何かが変わったのである。通勤電車に乗っていて、ただ窓の外を眺めていただけなのに、涙がポロポロとこぼれ出したのである。いつも通りの風景なのに、目に飛び込んでくる、その形の、色彩の、その反射する光の美しさに感動していたらしいのである。らしい、というのは、涙がこぼれ落ちた理由が、すぐにはわからなかったからである。普通に歩いていても、破けたセロファンをまとった、タバコの紙箱に、泥のついた、そのひしゃげたタバコの空箱の美しさに目を奪われたり、授業をしている最中でも、生徒の机の上に置かれた、ビニール・コーティングされた筆箱の表面に反射する光の美しさに、思わずこころ囚われたりしたのである
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