緩衝地帯/川崎都市狼 Toshiro Kawasaki
 
ボーイフレンドたちは日射しのたゞ中
溶けてしまひさうになる
そんな夏が戀しい
やけくそ氣味に陽光の氾濫に
彼らは身を投げ出す
海だ
海が見えるよ
ぴかぴか光る紺碧
處構はず全裸に近い
女の子たちを配置し
彼らの妄想はぐんにやり詰まらぬ現實を歪曲する
ダリの?
キリコの赤と
咳けり 四ツ谷龍
遠く離れた冬の秀句に
カタロニアの天然色を織り込んだ俳人は流石
プロフェッショナルの氣概を見せつけた

逃げ水
何処まで逃げる?
打ち水
うちに寄つて白玉でもお食べ
井戸水できんと冷やした-
齒の根が合はない夜の寒さには
汗みづくの思ひ出が効く
冬、僕たちは居場所を探す
おカネもかゝらず、人目に立たず、暖かい、場所など
街にはさうあるもんぢやない

〈カンタベリー大司教拭ふ天文に忠實である巨大機械を 平手みき〉
この歌で僕たちは
過ぎ行く季節を棄てゝ
緩衝地帯に入り込む

#詩

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