俗・西遊記/栗栖真理亜
してやった。
「私は皇帝の名により、天竺の有難いお経を取りに西安から参った玄奘という僧だ」
大岩の化け物はそこで黙り込み、なにやら考え込んでいる様子だった。
再び口を開いた時に化け物の声は先程の元気を幾分か失くしていた。
『そうか・・・、じゃあ、オマエがアノ釈迦の言ってた坊主なんだな』
急に大人しくなった怪物は自分の名といきさつを語り始めた。
『俺の名前は齊天(せいてん)大聖(たいせい)孫悟空(そんごくう)。傲来国・花果山の偉大なる王。またの名を美猴王とも呼ばれるが、そんなことはどうでもいい。ともかく、その花果山の霊石より生まれ出た後、俺のお師匠である菩提祖師に仙術を習い、托塔天王の第
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)