裸のおやつ -生前葬-/川崎都市狼 Toshiro Kawasaki
 
時には母のない子のやうに
一箇のカレーパンを貪る
時には子のない母のやうに
花と云ふ花に名前を付ける

僕を踏み台に出來たなら
それは彼女らの優しさだつたらう
嗚呼そんな戀心だつた
僕を去來した唯一つのもの
嗚呼そんな傷心だつた
僕をこの地平にしがみつかせたものは

レクイエムを歌はう
日々是好日
のほゝんと また再び歌はう
ニヒリズムとナルシシズムの間ハザマで
僕は 僕はと始めるしか
能のない詩人
僕は 僕はと終はらせるしか
己れのテクニックをひけらかさない

飽くまでも自分の為の葬列を眺め
葬式饅頭を頬張る
茶を喫し その後
おくび
まさしく正直さゆゑに幸福な人生だつたと
人は羨むのか知ら

#詩

戻る   Point(3)