祭りのあと/栗栖真理亜
 
長月の幼い思い出は、遠い昔の祭囃子が運んでくる。
あれはまだ僕が幼かった頃の思い出。
胸に秘めた酸っぱいようなむず痒いような、本当の出来事は誰にも知られたくない。
そう、僕はまだ小学生で、その小さな手では何も掴めなかった。
毎年九月に催される岸和田だんじり祭が子どもながらに楽しみで、心待ちにしていた。
そう、その日は祭の子供会で、一番先頭の比較的安全なポジションで山車を牽いていた。
しかし、ふとした拍子に、足元に小さな石ころでも転がっていたのか、躓いて転んでしまった。
「あッ!」
気付いた時にはもう遅い。
山車は目前まで迫っていた。
《もう、ダメ……ッ!》
身を翻すことも出来
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