桜花の舞/栗栖真理亜
春になると京都加茂川沿いの桜は淡い桜色に染まる。
そのなかでも、北山橋と北大路橋の中間に位置する賀茂街道で咲く枝垂桜は特に有名で、 日暮れ時でもわざわざ見物に訪れる花見客が後を絶たない。
他の桜とは違い、この桜並木だけは女のような紅を付ける。
物悲しくしな垂れながら―――――。
私はそこを通るたびに母に教えられたあの話を思い出すのだ。
その為・・・だろうか?
この桜が一種独特な妖気を帯びているような気がする。
私は通るたびに考えるのだ。
夜の闇の中で妖しくも美しい紅を咲かせる枝垂桜が今にも自分の精気を
すべて吸い取ってしまうのではなかろうか、と。
そして私
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