ATOM HEART MOTHER。/田中宏輔
とを知っているからこそ。そうして、その感覚は、わたしを、さまざまなものの前で開く。わたしを、さまざまな時間に存在させる。わたしを、さまざまな場所に出現させる。わたしを、さまざまな出来事と遭遇させるのである。そうして、わたしではないものをも、わたしであるという感じにさせるのである。彼らが入ったラブホテルの、そのシャワーの湯のあたたかさが、わたしの肌となるように。そのシャワーの湯しぶきのきらめきが、わたしの目となるように。そのシャワーの湯しぶきの蒸気に満ちたシャワー室そのものが、わたしの息となるように。
ああ、それにしても、「いまだにみんながきみの愛について語ることをしないのは、いったいどうし
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