ATOM HEART MOTHER。/田中宏輔
自分に自信が持てなくなって
いつかはすべてが裏目に出る日がやってくると
堰堤の澱みに逆巻く渦が
ぼくの煙草の喫い止しを捕らえた
しばらく円を描いて舞っていたそれは
徐々にほぐれて身を落とし
ただ吸い口のフィルターだけがまわりまわりながら
いつまでも浮標のように浮き沈みしていた
わたしが生まれてはじめて書いた詩である。初出は、「ユリイカ」一九八九年八月号・投稿欄である。選者は、吉増剛造氏である。つぎの詩は、同誌の一九九〇年九月号・投稿欄に掲載されたもので、選者は、大岡 信氏である。「高野川」を書いていたときには、まだ、詩は、堀口大學氏の訳詩集である『月下の一群』くらいし
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