首曳きの唄/栗栖真理亜
続く階段を上り、金属製の重い扉へとたどり着いた。
「おい」
いきなり振り返って僕の肩をポンッと叩くと、開けてみろといわんばかりに垣ノ内が扉の方向へ顎をしゃくってみせた。
僕は不信そうに扉とヤツとを交互に見やったが、しぶしぶ、扉を開けた。
扉を開けたとたん、強風に煽られて、あわや僕の身体はひっくり返りそうになった。
「おいおい、しっかりしろよ」
背中からヤツが半分面白がっている様子で野次った。
「いくじなしだなあ、お前」
ケラケラと笑われ、心なしかムッとした僕はコンクリで塗り固められた灰色の地面へ一歩足を踏み出した。
視界に映るのは僕の気持ちとは裏腹にただただ雲ひ
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