首曳きの唄/栗栖真理亜
向いた先には、僕が秘かに想いを寄せるあの渡辺万里子の姿があった。
「すみません、あの、ちょっといいですか?」
彼女は本当にすまなそうに小声で話しかけて来た。
ごくっ。
僕はつばを飲み込む。
端正な顔立ちが僕を見つめている。
しかも、今まで余り話しかけたことのない僕に話しかけている。
僕は無言でコックリと頷いた。
頷きざま、目の前の美しい身体を曲線に沿ってなぞる様に眺め回した。
それに気付いた彼女が自分の身体を庇うように身を硬くする。
その姿がますますセクシーで僕は下半身が熱くなるのを感じた。
「あの、これを・・・」
彼女が丁寧に二つ折りにした小さな紙
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