首曳きの唄/栗栖真理亜
リと手を伸ばして、ロッカーの扉を開け、四角い口の中を覗き込んでみた。
やはり思ったとおり、ロッカーの中に納まっているはずの生首はバッグと共に 姿かたちもなくなってしまっていた。
「ふっ、く、く、く、く、く、く、く、く、くッ!」
本来落胆しているはずなのに、またもや、このこみ上げてくる笑いは一体何なのか、もはや、僕には分からなかった。
僕自身が分からないのだから、おそらく他のものは何のことやらさっぱり分からないだろう。
気が付けば周りの生徒はみんな奇異な目で僕を見つめていた。
僕は慌てて笑いを喉元に押し込むようにして飲み込むと、ロッカーの扉を閉め、一目散に教室へと向かった。
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