首曳きの唄/栗栖真理亜
 
雲ひとつない真っ青な顔をした空だった。
「なにぼ〜〜っとしてんだよ。はやく退けよ」
ヤツは邪魔だといわんばかりに僕をこついた。
「わ、わかったよ」
僕は仕方なしにまた一歩前を進んで、背後にいるヤツのために身体を横へどかした。
「ふぁああ〜〜〜、今日もいい天気だよな〜〜〜!」
垣ノ内は大きく伸びをすると、鉄の柵のほうへとゆっくり近づいていった。
「お前もこっち来いよ」
ヤツが俺を手招きするように呼んだ。
僕もあわてて駆け寄る。
「もっとこっち来い。大事な話があるんだ」
僕の腕を掴むとヤツは強引にそばへ引き寄せた。
「な、なんだよ・・・」
僕は反発を
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