首曳きの唄/栗栖真理亜
 
うな気がした。
手を引き出してよく見てみると、明らかに茶褐色に変色した血が少量、指先にくっ付いていた。
「フフッ」
またもや喉のそこから笑いがこみ上げてくる。
(さあてと。次はどんな愉しいコトが待ち受けているのやら。)
僕はぺろっとそれを舌で舐めとると、ほくそ笑みながら、そのまま教室へと向かった。

教室内では誰も僕に気付く者はいなかった。
廊下に立って友人と長話している者も、机の周りを取り囲んでなにやらゲームに熱中している者も、黒板に落書きして遊んでいる者も僕の姿は目には映らない。
まるで空気が通り抜けただけとしか感じないのだろう。
もうそんなことにすでに慣
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