柔らかき手の殺意/栗栖真理亜
 
コントロールスイッチをONにする。
今流行りのアーティストの曲が流れる。
しばらくそれに耳を傾け心を落ち着かせる。
しかしそれも束の間だった。
疑いが風船のようにどんどん膨らんでいく。
(やはり白黒つけなくっちゃ)
僕は頭を擡げ続ける疑問を解消する為に立ち上がった。

数分後、がっかりした心持で部屋に戻った。
結局は問いただすどころか、一言も喋ることさえ出来なかった。
本人を目の前にしたとたん、今まで考えていた言葉が喉の奥に詰まったまま出てこなくなったからだ。
こんなことじゃいけないと思いつつも、どうしようもなかった。
あの何事も無かったように機嫌よく
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