夢人の恋/栗栖真理亜
それは叶わぬ恋のはじまりだった。
淡く夢のように果てしなく・・・いや、夢見るオトメの正真正銘の夢物語だった。
白昼夢、ともいうのか、ともかく、それにも似た妙な夢を見た。
ぼんやりとかすかな記憶の中、”彼”が私の目の前に突然現れ微笑んだ。
私の身体は自然と彼の唇を欲し、彼と触れ合った。
彼が誰なのか未だに思い出せない。
ただ、彼は何処にでもいる平凡な顔付きで私を見つめている。
私はまるで犯罪者であるかのように彼とのこうした悪行が誰かに漏れないかと常に胸を高鳴らせている。
しかし、彼のほうはかえって気にしていない様子で平然と事を進めている。
彼の指が私の白いシャツに
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