戸をたたくのはだれ?/栗栖真理亜
「どんなことがあっても、絶対に知らない人を家に入れてはいけないよ。」
そう子ども達に言い聞かして、母親は出かけて行きました。
「分かってるよ、ママ。絶対に知らない人なんか入れないよ。」
子ども達は薄ら笑いを浮かべながらそう応えて、母親を見送りました。
ものの五分とも経たないうちに、トントンと戸を叩く者がありました。
誰だろう…・…?母さんが忘れ物でもして帰ってきたのかな?
子ども達はお互い顔を見合わせました。
「かあさんだよ、開けておくれ。」
しかし、その声は母親とは似ても似つかないしわがれ声でした。
ははあん、これは母さんじゃないな…ということが直ぐにぴんと来たので、「本当に母
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