授業/たもつ
 
しまうから
 誰もが呼吸を止めない
 もう一人の日直が
 昨日転校してきた人を保健室へと運ぶ


三限目 英語
 ぬる
 ぬるぬるだねえ
 国際化の波がここまで押し寄せてきた好例だねえ
 この国際化はぬるぬるだねえ
 教卓がぬるぬるだねえ
 リピートアフタアミーがぬるぬるだねえ
 どこまで行っても救いが波みたいに続いている
 確かにぬるぬるで
 ぬるぬるでした


四限目 我が国における雇用の実態について
 大きな木の下で女と男が出会う
 二人は熱く抱擁し全裸になると
 隅々までお互いの体を舐め回す
 坂道を
 自動車の無いタイヤが転がっていく
 女も男もやがていなくなるまで
 生きた

 
昼休みそして五限目以降
 風を追いかけていく小人の足跡のように
 あっ気なく省略されて
 既に跡形もない


   酋 長「そうかもしれない」
   中年A「そうかもしれません」
   ゆう子「気安く触らないでください」


まだ教室にたどり着けない現代文の男が
赤く錆び付いたまま小さく言葉を発した




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