授業/たもつ
一限目 数学
ただ何事も無かったかのように
男は黒板に数式を書き足していく
黒板がすべて埋まると消して
再び数式を書き始める
数人の未成年がノートに書き写していくが
誰も男の背中を思い出さない
その間にも校庭の隅に百葉箱はあって
やはり何事も無い
近くにはどこまで行っても交わらない直線のように
幾つかの影が平行に並んでいる
二限目 現代文
教えるべき男は膨張する宇宙に足をとられて遅刻
教室の中央では蟻が行列を作っていて
日直の一人が涙を流しながら順番に潰している
部屋には潰された蟻の臭いが充満し
誰かが息を止めれば皆窒息してしま
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