弔辞台本原稿 長男へ/鏡文志
 
の不満を聞いた父親は時々言いました。
「病気だから仕方ない。我慢して」
と。精神病と認められてから両親は長男に対しとても甘くなりました。足をテーブルに乗せる。エロいポスターを一緒に買いに行ったこともあったようです。長男は音楽家として成功することを夢見ていました。言葉のないインストゥルメンタルでした。成功することはとても難しかったと思います。素質とか才能というのがどういうものか私は正直わかりません。しかし音楽というものを理解しわかっているかどうか。それが作品に現れていることは一つの評価基準になるとは思います。言葉がない。理屈がない。理屈が抜け落ちている。しかし、それを聞いて心地よいと思う人もいる
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