僕のために祈っているとしたら/秋葉竹
 


 

甘ったるい
紙の本たちは眠りこけ
つみかさねられたその時間は
子守唄よりやさしい響きを感じさせる
かなり音程の外れた歌声で
耳を撫ぜるように笑うのは君かなと

つきとおす真っ黒な嘘だけが
つきまとう無音の闇に染まり
それでも美しい影を落として
心の上流からあふれ出し流れ出す

新しい血のような冷たさで
頬を止まれない滂沱溢るる涙の如く


溺れてしまった君の
憶えたてで純白なやさしい歌声が
星になど届かなくても大丈夫なのかなと


東から西へ夜空を駆けるがけっして
時を駆ける訳ではない水星が
その歌心をうたいたい天空に
いまひとつの希いよ叶えよと

僕のために
祈っているとしたら

君も月も眠れない夜に
まっしろなちいさな蝶々が
僕を目指して一直線に
飛び込んでくるだろう
汚れてしまった僕の胸へまっすぐに

それが生きるってことなら
できることなら生きてみたいなと








戻る   Point(1)