それとしかいえない【きょうのソネット】/佐々宝砂
 
目覚めている私の前には現れない
ずっと待っていたのに決して
出てこない気配あっても黙して
祈っても願っても姿を見せない

その名前はたくさんあって
その現象を呼ぶ名もたくさんあって
だから私は名付けたくない
名付けたからとて手懐けられるわけでなし

人間が勝手につけた名前など
無視するだろうと思っている
あるいは名付けたくないほど
神聖視しているのかもしれない

奇妙な声で歌い構造色を煌めかせ
それは夜毎の夢にだけ現れる




戻る   Point(2)