THE GATES OF DELIRIUM。/田中宏輔
 
り、彼らがその映画館を出てラブホテルに入って行くときに、彼らを照らしていた街灯のきらめきもわたしであったのだし、彼らが浴びたシャワーの湯もわたしであり、その湯しぶきの一粒一粒のきらめきもわたしであったのだし、わたしは、その青年の入れ墨の模様でもあり、缶コーラの側面のラベルのデザインでもあり、その缶コーラの側面から伝って流れ落ちるひとすじの
冷たい露の流れでもあったのだから。やがて、一つ一つ別々だった時間が一つの時間となり、一つ一つ別々だった場所が一つの場所となり、一つ一つ別々だった出来事が一つの来事となり、あらゆる時間とあらゆる場所とあらゆる出来事が一つになって、そのポルノ映画館は、シャワーの湯
[次のページ]
戻る   Point(13)