THE GATES OF DELIRIUM。/田中宏輔
 
のである。
(『コリント人への第二の手紙』五・一七)


 結びつくことと変質すること。この二つのことは、じつは一つのことなのだが、これが言葉における新生の必要条件なのである。しかし、それは、あくまでも必要条件であり、それが、必要条件であるとともに十分条件でもある、といえないところが、文学の深さでもあり、広さの証左でもある。もちろん、引用といった手法も、その必要条件を満たしており、それが同時に十分条件をも満たしている場合には、言葉は、わたしたちに、言葉のより多様な切子面を見せてくれることになるのである。

 
 自分自身のものではない記憶と感情 (……) から成る、めまいのする
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