THE GATES OF DELIRIUM。/田中宏輔
かった。その男にマスをかいてもらっている男の子の顔には恍惚(こうこつ)とした表情が浮かんでいた。前かがみになり懸命になってマスをかいてやっていたので男の顔は見えなかったが、あの男こそ匿名の性犯罪者、盲目の刈り取り人、正真正銘の <切り裂きジャック> だった。その時はじめてラーラ座がどういう映画館なのか分った。あそこは潜水夫、つまり性的な不安を感じているぼくくらいの年齢のものがホモの中でもいちばん危険だと考えていた手合いの集まるところだったのだ。男色家の男たちがもっぱら年若い少年ばかりを狙って出入りするところ、それがあそこだった──もっとも、あの時はぼくの眼の前にいた男色家が女役をつとめ
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