THE GATES OF DELIRIUM。/田中宏輔
た。
彼等立ちぬ、いざ生きめやも。
「おいそれさ行(え)ぐんだで!」
本屋は二階の二十歳に寄りかかって、彼が背のびをしたように延びて、書棚を抱(かか)え込んでいる函(はこ)館(だて)の西洋風を見ていた。――梯子(はしご)は本まで吸いつくしたモオパスサンをボオドレエルと一緒に捨てた。ストリントベリイはおどけたように、色々にひっくりかえって、高いイブセンをすれずれに落ちて行った。シヨウはトルストイ一杯酒臭かった。 赤い日の暮を巾(はば)広く浮かばしている彼や、本最中らしく背文字の中から本をグイと引張られてでもいるように、思いッ切り世紀末に傾い
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