THE GATES OF DELIRIUM。/田中宏輔
くず}の果物を数へて行つた。が、織物はおのづからもの憂い波の中に沈みはじめた。風はとうとう煙も尽き、波の石炭を下りようとした。すると匂いのないウインチが一つ、丁度ガラガラの音の上に突然ぽかりと波をともした。蟹工船博光丸はペンキの上に佇(たたず)んだまま、帆船の間に動いてゐるへさき(ヽヽヽ)や牛を見(み)下(おろ)した。鼻穴は妙に小さかつた。のみならず如何にも見すぼらしかつた。
「錨(いかり)は鎖の甲板にも若(し)かない。」
マドロス・パイプは暫(しばら)く外人の上からかう云ふ機械人形を見渡してゐた。……
ここで比較のために、もとの『蟹
[次のページ]
戻る 編 削 Point(13)