金さんの最期/室町 礼
 
を得ました。そのおかげで当時のわたし
はバイクに乗って日本中を旅する日々を満喫して
いたのでした。
ただ、わたしが住んでいた家はわたしの家ではな
く知り合いの喫茶店主、西という男が若宮正則と
いう人物から管理を任されていた住まいだったの
です。若宮正則氏が異国で亡くなってからは西か
らわたしがその家を任されておりました。
じつのところ金さんがどうしてわたしの家に住む
ようになったかその経緯はよく思い出せないので
す。というのは、わたしの家はだれであれ出入り
自由だったから基本、寝泊まりするところがない
人はだれでも勝手に入って、勝手に寝ることが出
来たからです。これはわた
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