星待ち/AB(なかほど)
 
車に揺られて。悪くない、今の暮らしは。愛してる、妻や子供達を。でも、それでも半分酔った帰り道に思うんだ。「帰りたい」あの空の下に帰りたい。あの星の空の下に帰りたい。あの街の星の空の下、の安いアパートの部屋の窓、から見上げていた星座、の名前さえも知らない、くせに夢は抱えたつもり、の物も知らない世間知らずの馬鹿、に帰りたい。帰りたい。あの空の下に帰りたい。電車下りて、坂道上って、笑顔つくって「ただいま」って言えば、星はもう。



「花束と折り鶴が少しだけ風に揺れる、ように」 より
  
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