光の翅と還りゆく詩の人と*/ひだかたけし
 
寄る辺なき一本の傘をしっかりと差し
冬空の透きとほる青をわたりゆく者の魂
都会の地にたおやかな会釈の影をおとした
忙しく行き交う人々の誰一人として足を留めることなく
影は寄る辺なき余韻を残しながらやがて
すぅうと地の重力に呑み込まれゆく
間際に或る子らの一団 、
自らの銀の翅をゆっくりゆったり開閉しながら
影の会釈のたおやかさを吸い込み吐き出し
銀の光の粒子を行き交う人々の独り独りの影に
ひそやかにひっそりと降り注ぎ続けた









*石原吉郎『足利』&谷川俊太郎へのオマージュ

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