リアル/栗栖真理亜
祖母は手に擦り付けた自分の排泄物で手摺と壁をベタベタにさせた
そして寝たきりになった後も祖母はうまく寝返りが打てずに
背中にできた褥瘡が辛いのか
夜中に何度も「お願いしますお願いします」と
呻き声のような声を出しては横に寝ている私達を呼び付けて眠りを妨げた
ついには現実と妄想の区別が付かなくなって
「知らない男性がそこに立っている」などと
意味不明な言動まで繰り返すようになった
それでも母の兄達は一切援助しようともせず
結局は最期母一人の力で祖母の命の選択を決めなければならなかった
現実は詩のように美しくはない
ましてや介護など美しいだけで済む筈がない
絶えず迫り来る死と汚物の匂いを漂わせ
過酷と重労働の二重奏
甘い夢や馴れ合いなどそこには存在しない
ただそこにあるのは
お互いが人格の皮を剥ぎ赤恥すら脱ぎ捨てて真っ裸に生きた人間の有様だった
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