still hate/中田満帆
 
ッキンバードを咥えてこの室に退避してきたんだ
 もはやどこにも帰りようがない
 もどる場所はない
 母さん、
 ぼくはこれでもがんばっているんだ
 あなたが生存するという論証などいらない
 あなたが埋葬されたという報せが欲しい
 それならあの男みたいに教誨師を追い払うことだってできるのに
 かの女は嗤った
 まるで鏡のむこうにいるみたいに
 かの女はぼくを見ない
 それでも声だけはぼくを捕らえる──かの女はいう
 知らなかったわけじゃないけれど、
 あなたがあんまりかわいそうだったから、
 もっといじめたくなっただけ
 勘違いしないで
 他人を苛むことで慰みを憶えたりはしなかった
 ただわたしは大人になったということよ
 あなたはみすぼらしかった
 いまだってそう、
 でも少しましかもっておもう
 いまあなたが書いた辞が
 だれかを傷つけても
 わたしには無関係
 だから早く、
 わたしのことなんか、
 懐いださないで
 気持ちわるい
 死ねって。

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