They call it Love/
塔野夏子
君はそれを愛であると信じたかった
僕はそれが愛でないことを知っていた
それが愛であると
嘘でも君に云うことができれば
君は幸せになったんだろうか
だがその幻想を信じる君を
見たくはなかった
そしていずれその幻想も醒めただろう
さりとて代わりに
これが愛だと指し示せるものを
僕は持ってはいないのだった
かくして君と僕は
それぞれ逆方向から愛に憧れながら
愛を語る数多の谺(こだま)の中を すれ違ってゆく
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