異変/ホロウ・シカエルボク
知りたいというわけでもない、思い出せないというのならそれでもいい、なにか不思議なことがあって見知らぬ部屋で寝ていた、そんなネタ話にしてしまうだけのことだ、上体を起こしてしばらく待ってみたけれど、特別何も起こらなかった、ようやくお目覚めかね、なんて、ゴリゴリのバリトンで語りかけられるなんてこともなかった―ドラマじゃあるまいし―まあ、シチュエーションだけなら、多少ドラマ的な感じではあるけどな…億劫だったが、ベッドを降りてみた、洋服は、外出する時によく身に着けているものだった、ということは、俺は自分の意志で外出したのだ、部屋にはパイプベッドと洗面台と、トイレと思わしき簡易的な狭い部屋があるだけだった、工
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