心異になりにけり/万願寺
私の人生が尺に巻かれて踊る踊る。あなたの銀星が波にまぎれて響く響く。なんでもない所から(いいえ、本当はなんでもない所など無く)普遍的な細胞がわかれてわれて次の命のもとになる、その気まずさにあなたはやたらと時間を気にする。おっと、と思うともう次の発車ベル、せわしない人の命の発生と終了は。あんなに大事だった誰かがある日突然いなくなる。私に対する誰かの暴力でもなんでもなくて、ただその時が来て鐘が槌で敲かれる。キーン、と空気が凍るともうそこに只者はおらず、死の砂が特別に特別に嵩むだけ。あなたのお母さんだった人はもうおらず、あなたのお母さんはあなたのことをもう思うことができず。生中出しという喜劇の分際、鴻鳥がとても大きく旋回し、泣くほどあっけなく子ができる。次の命は、前の命からぬるりと別れる。そんなことが出来るとも思えないのにあなたのお母さんがまた死ぬ。私には踊り場があるが、あなたにはプールサイド、それも平均台ほどの幅しかない。それで光っていたんだね。泣くほど光っていたんだね。なぜか。生れるよりも早く死ぬ。生れるよりも早く死のう。こちらの涙を天にまします火星人たちに悟られないよう。早く。
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