定めの夜/ホロウ・シカエルボク
 
う頼まずとも終わる頃を見計らって出て来る、俺は時間をかけてそれを飲む、自分の人生がすべて、その苦みと共に飲み込まれて消えて行く気がする、きっと少し眠いだけなのだ、まともな人間ならベッドに潜り込もうとする時間だ、そんな時間に食事をするような人間はきっとどこかおかしいのだ、ピンボールに熱中していた老人が帰ってしまうと店は一気に静まり返った、ソニー・ロリンズは相変わらず余裕綽々で吹いていた、俺は珈琲を飲んで金を払った、いつもならありがとう、と小さな声で言うマスターが、その夜には違うことを呟いた、実は今日で閉めるんです、と、いつもと何も変わらない調子で彼はそう言った、そうなんだ、と俺はぼんやり答えた、突然
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