ルミエ/九十九空間
と聞こえた
「ルミエ」
と僕は彼女を呼んでいる
朝の霧は昼にはひいて
はっきりとした青空が見える
列車の走る音も
ときどき聞こえる
パリから離れたこの小さな田舎町に
大きな大学がある
町全体が
大学を中心に回転しているような気がする
ルミエとふたりで
よくキャンパスを歩く
適当なベンチで
サンドイッチを食べながら
お互いの言葉を教え合う
将来はここで
文学を勉強したいのだという
僕は
僕は将来
何がしたいのだろう?
ルミエはときどき
すこし苦しそうに
すこし笑いながら
ゆっくりと深呼吸する
そのたび僕は
ゆっくりとふくらむ
彼女の胸から
目が離せなくなるのだった、
好きだった人の
きっと
知らない町にいる
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