立冬トンボ/
本田憲嵩
赤トンボ、
ほとんど木枯らしにひとしい、
寒さでアスファルトに不時着した、
晩秋の、
ちいさなヒコーキ、
それでも在りつづける、
そのままの、かたち、
やがて、その透明な羽が、
きわめてうすいガラス細工のように、
ふッと息を吹きかけただけでも、
きわめてもろく砕け散ってしまうように、
つよい北風に舞いあがって、
まばゆい、冬の塵のひとつとなる、
ひかりと礎、
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