熊のフリー・ハグ。/田中宏輔
客層はばらばらで
あんまりふつうの感じのひとはいなくて
クセのある個性的なひとが集まる店だった
西部劇でしかお目にかからないようなテンガロンハットをかぶったひととか
いやそのひとはときどき河原町でも見かけるからそうでもないかな
マスターである主人は芸術家には目をかけていたようで
店内には客できていた画家の絵が掲げてあったり
大学の演劇部の連中の芝居のチラシが貼ってあったり
ぼくも自分の詩集を置かせてもらったりしていた
老夫婦たちが話題にしていた人物が
じっさいには何歳なのか
具体的にはわからなかったけれど
年齢差のあるカップルについて話していたみた
[次のページ]
戻る 編 削 Point(14)