熊のフリー・ハグ。/田中宏輔
幸せちがってた
だけど
いっしょにいなかったら
もっと幸せちごうたと思う
そうとちゃうやろか」
と
この齢になっても
愛のことなど、ちっとも知らんぼくやけど
「俺といっしょに行くんやったら
きたない居酒屋と
おしゃれなカフェバーと
どっちがええ?」
「カフェバーかな」
「俺は居酒屋や
そやからインテリは嫌いなんや」
「きみだってインテリだよ」
「俺のこと
きみって言うなって
なんべん言うたらええねん
むっかつく」
ぼくは、音楽をかけて本を読み出す
きみは、ぼくに背中を向けて居眠りのまね
いったい、なにをしてたんだろう
ぼくたちは
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