熊のフリー・ハグ。/田中宏輔
 
幸せちがってた
 だけど
 いっしょにいなかったら
 もっと幸せちごうたと思う
 そうとちゃうやろか」

この齢になっても
愛のことなど、ちっとも知らんぼくやけど
「俺といっしょに行くんやったら
 きたない居酒屋と
 おしゃれなカフェバーと
 どっちがええ?」
「カフェバーかな」
「俺は居酒屋や
 そやからインテリは嫌いなんや」
「きみだってインテリだよ」
「俺のこと
 きみって言うなって
 なんべん言うたらええねん
 むっかつく」
ぼくは、音楽をかけて本を読み出す
きみは、ぼくに背中を向けて居眠りのまね
いったい、なにをしてたんだろう
ぼくたちは
[次のページ]
戻る   Point(15)