熊のフリー・ハグ。/田中宏輔
ょっと脂くさい頭のにおいがして
べつにシャンプーやリンスのいい匂いではなかった。
「ただの頭のにおいやん。」と言うと
「ええ匂いせえへんか。」と言われた。
「帰り道、送って行ったるわ。
祇園と三条のあいだに中村屋があったやろ、
その前を通って行こ。」
と言われたが、チンプンカンプンで
それは、いまぼくが住んでるところとはまったく違う場所だし
祇園と三条のあいだには中村屋もない。
しかし、芸能人が夢に出てくるのは、はじめて。
むかし、といっても、5、6年前のことだけど
ひと月くらい、北山でいっしょに暮らしていた男の子がいて
きのう、その子とメールのやり
[次のページ]
戻る 編 削 Point(15)