熊のフリー・ハグ。/田中宏輔
ぼくは、
ジミーちゃんに、知ってるの?
と訊くと、いいや、と言いながら首を振りました。
ジミーちゃんのお母さまに、
なぜ知ってらっしゃるのですか、とたずねると
「わたし自身がそうだったから。
しょっちゅう、そう言われたのよ。
でももう、わたしの親はいないでしょ。
だから、最初の雨はもうあたらなくなったのね。」
そういうもんかなあ、と思いながら聞いていました。
広沢の池で
鴨がくちばしと足を使って毛繕いしていたときに
深い濃い青紫色の羽毛が
ちらりと見えました。
きれいな色でした。
背中の後ろのほうだったと思います。
鴨が毛繕いして
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