赦されて  /リリー
 
 閉じたビニール傘から飛び散る
 雨滴
 会社の広大な敷地内を車と自転車が往来する
 東の正門で守衛室に社員証を提示しても
 配属先の建屋へは延々と
 アーケードの歩道を歩き続ける
 
 さっきから 
 どこを飛んでいるのか
 ヘリコプターの音が
 眼のまえの風景を狭くるしく圧している
 湊鼠の天幕はられる上空を
 孤独な大きい蜻蛉は過ぎて行く
 秋入梅の朝

 人にまみれて進む足許の
 潰れた小さなカマキリの死骸を跨いで
 なぜか私は問うてみる
 何故 歩いているのだろう
  
 私の生は、どうしようもなく ぶざまで
 ひとには見せられない自分をいつも
 肯定している
 黙って目をとじれば
 クスクス低い声で笑いだす
 これからも
 私にゆめを赦すために

 
 
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