木枯らしの顔/ひだかたけし
 
あおい青い大空がひろやか広がり
ふとよろりお爺さんが眼前を過る

あんれ、まあ 不思議なこと、
外出したとたん待ち合わせた様に

連日二日見た禿頭痩身の背の高いお爺さんが
眼前を歩むのだ、又ゆっくりゆっくり慎重に
言うことを聞かなく成りつつ在る肉体を運び
あおい青い大空の許を陽の光をまともに受け
緩むことのない真剣な表情を斜め前に向け

あおいあおい大空のいっそう青く青く広がり
そのひろらかな顔は少しのことも動くことなく

向こうの森林は木枯らしに大きく揺れ
やはらかな陽光に高らかに照り映え
そして私は慢性的な痛みに耐え
鍛え上げた初老のこの肉体を
アスファルトに打ち付けながら
今日を大股でずんずん歩み進む

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